知っていますか? 憲法の基本原理について

今年の憲法記念日のニュースは、やはり9条の改正がメインでしたね。

あなたは、憲法の全文を読んだことがありますか? 私は恥ずかしながら、法律家を志すまで、一度もきちんと読んで理解しようとしたことがありませんでした。しかも勉強を始めてからも、内容を理解するのに正直かなり苦労しましたし、未だにすべてを理解したと思っていません。しかし、憲法こそ、国内すべての法の”頂点”であり、様々な法の中で唯一、国家権力を制限して国民の人権を守るためにあるということを知り、無知によって遮られてきた視界が一気に開けた思いがしたものです。

憲法改正が様々なところで取り上げられるようになって、9条についてはあなたも見たことがあるでしょう。もちろん9条も大切な条文ですが、実は憲法の最も重要とされる条文は13条にあります。一度は学んだことがあると思いますが、日本国憲法は、「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」の3つの基本原理からなります。この言葉も、通り一遍には理解できたとしても、果たして何のためにこの原理があるのか、今ひとつピンとこないかもしれません。しかし、13条を支えるためにこの3つの原理があるとわかれば、すんなりと理解できます。

13条の前段には、「すべて国民は、個人として尊重される。」とあります。わかりやすくかみ砕くと、”一人一人を大切にする”ということです。一人一人の自由を保障し、誰もが人間としての尊厳をもって、個として尊重されて、生きることをめざしましょうという理想です。 しかし、人はそれぞれに個性があり、違うからこそ、共感や尊敬もあれば、差別や偏見、時には争いも生まれます。それを、知性や理性、正しい知識で乗り越えて、人と違う多様性を、寛容な心で受け入れることを目指そうというのです。

実に当たり前のことのように思われるかも知れませんが、これがいかに難しいか、身近なことで想像してみてください。自分とは違う性別、年齢、学歴、地域、人種、興味、様々な違いで、距離を置いたり、無関心になったりしたことはありませんか? 人は、恵まれた境遇つまり多数派にいれば、どうしても少数派に対して無関心になってしまいます。 憲法は、私たちの生活の中で、強いものと弱いものがいる場合に、強いものから弱いものを守るためにあるといえます。どんな社会にも、少数派つまり弱者はいます。 この弱者を、権力、暴力、財力、社会的地位、専門知識などの強い力から守るために、憲法が有力な道具となるのです。

あなたは、いま所属する社会の中では、多数派ですか?今はそうであっても、いつ少数派になるかわかりませんよね。例えば、会社が倒産してしまう、急な病気になってしまう、年齢を重ねて介護が必要になる、などです。人間はいつ弱者になってもおかしくないし、だからこそ他者への共感を大切にしなくてはなりません。そういう他者への理解、つまり想像力を持つことが、憲法の原理を理解する上で大切になことなのです。

法律の中でも最も遠い存在の様に思われた憲法は、実は私たちの生活にとってとても大事で特別な法なのです。私は、私たちの大切な権利や自由を守るために憲法があることを改めて意識することにより、これまで無意識にスルーしてきたニュースも、違った視点で見ることができるようになりました。憲法を理解することは決してたやすいことではありませんが、ほんの少しでも興味をもって見てみると、違った世界が開けるかも知れません。

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