明日からの経営に役立つ!会社法を学ぼう Part 17
あなたはM&A(エムアンドエー)を日本語で定義できますか? 直訳すると、合併と買収で、企業の買収や合併などの総称を指しますが、その方法として様々なスキームが存在します。 例えば、ある企業の事業や資産を取得する場合、吸収合併、株式の取得・移管、会社分割などがあります。また、広義では、合弁会社設立を含めた資本提携や業務提携、OEM提携なども含まれることでしょう。これらの制度について、会社法では”組織再編”の制度として定められています。
ところで、M&Aの目的としては、どのようなケースが考えられるでしょうか?
・新規事業の立上げ
・新規市場への参入
・グループ企業を再編
・複数の事業を統合
・経営不振の企業の再生
・資金調達
・後継者不在の企業承継
これらの目的や達成したい条件、当該会社の状況などにより、様々な手法の中から自社に最適な方法を選ぶ必要があります。また、会社法に準拠した制度を選び進めていくだけではなく、第三者でも評価できるように会計上の指標を明確にしていく必要があり、専門家のサポートが必須と言わざるを得ません。私自身も何度かM&Aを経験していますが、新しい案件を手掛ける場合には、少なくともM&Aスキームの構築担当、会社法に精通した法律家、株価算定やデューデリのできる会計専門家が揃えば、様々なシナリオやリスクを想定しながら最適な交渉を進めていくことが出来ると思います。
さて、今回は様々なアプローチの中から、新規事業の立上げの際に採用を検討しやすい会社分割についてコメントしていきます。 まずは会社分割をする具体的な目的から見ていきましょう。
・多角経営企業において、一部の事業部門を独立させて経営効率を図りたい
・新製品開発部門を独立させて、外部資金を入れスピードを上げていきたい
・一部の事業が他社の事業とのシナジーが期待されるため、合弁企業を作りたい
上記のようなケースには会社分割スキームがフィットします。
ところで、会社分割には「吸収分割」と「新設分割」の2通りの方法があります。
吸収分割とは、株式会社の事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させることを言います。それに対し、新設分割とは、1または2以上の株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継することを言います。この二つのスキームでは、分割後の会社から交付することができる内容が若干違いますので、注意が必要です。吸収分割は金銭の交付も可能ですが、新設分割では設立会社の株式が一切交付されないことは認められていません。
これらの手続きについて、簡潔に説明するのは難しいのですが、吸収分割の場合は「吸収分割契約」を締結しなくてはならず、新設分割の場合は「新設分割契約」を作成しなくてはなりません。 これらは、原則として、株主総会の特別決議による承認が必要となります。 また、反対する株主に対しては、原則として株式買取請求権が認められると制定されています。また、どの程度の資産価値を持つ事業を分割するかによって、意思決定機関が変わったり、会計上の手続きも変更になります。
この会社分割の手続きは、合併とよく似ています。しかし、制度として大きく違うのは、合併の場合、譲渡する会社は消滅してしまうのに対し、分割は譲渡する会社が存続する点です。また、分割の場合、分割会社の債権者や使用人(労働者)など、権利義務の相手方にとって、合併よりも不利益になる可能性が高いのも特徴です。そこで、会社分割においては、分割会社の債権者や労働者を保護するために、合併とは異なる手続きが制定されています。
また、M&Aの分割会社の状況によっては、更に簡易な方法を選択することも可能ですので、興味があればお問合せ下さい。
以上、会社分割について簡潔にまとめてみました。 また機会があれば、別のスキームについてもコメントします。
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