明日からの経営に役立つ!会社法を学ぼう Part 20
今回はストックオプションの導入についてです。以前にも新株予約権についてコメントしていますが、導入の目的に応じて最適な形で設計し、可能な限りスケジュールを読みこんでその効果を得られるようにすれば、企業にとって大変有益な制度だと思います。 特に資金に余裕のない未公開会社の導入では、予想以上の効果が得られることもあるでしょうから、ご検討されることをお薦めします。
新株予約権は、取締役等に対しインセンティブ報酬として付与される場合をはじめ、第三者割当の方法で発行されることが多いです。そこで、第三者割当てと公募について少し詳しくコメントします。新株予約権の発行方法や手続きは、募集株式の発行等の場合とほぼ同じです。そして原則として、未公開会社の場合は、株主総会の特別決議で、募集事項を定める必要があります。
■募集事項
①募集新株予約権の内容・数
②募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないことにする場合はその旨
③募集新株予約権の払込み金額または算定方法
④募集新株予約権の割当日
⑤払込期日を定めるときはその期日
⑥新株予約権付社債に付されたものであるときは募集社債に関する事項
⑦新株予約お権付社債に付されたものである場合、新株予約権の買取請求の方法につき別段の定めをする場合の各事項
既に難しい内容がありますよね。少しかいつまんでご説明します。
②の発行に際し金銭の払込みを要しない場合とは、例えば取締役や従業員にインセンティブ報酬として付与する場合、職務執行の対価として付与するケースが考えられます。つまり金銭の払込みに代わって、役務を現物給付として認める形のことです。 また、何らかの理由で、例えば取引先との関係上で、発行を受ける者に有利な条件で付与する場合なども考えられます。
③の払込み金額の算定方法にてついてですが、新株予約権の金銭的評価は決められた方式で算出しますが、その評価額に見合った払込み金額でないと、有利発行となります。しかし、評価額は変動するし、評価額を導く算定方法も色々あり得るので、特定する形が認められています。
④の割当日とは、募集新株予約権については、割当日に申込者が新株予約権者となります。つまり、⑤の払込期日に払込みをして新株予約権者になるわけではありません。ここが、募集株式の発行と異なります。⑤の払込みについては、権利行使のための条件とされています。
⑥についてですが、新株予約権付社債の募集手続きは、社債の募集に関する規定は適用されず、新株予約権の募集に関する規定が適用されることになります。
⑦の新株予約権付社債に付された新株予約権の買取請求についてですが、原則として、社債も併せて買い取るように請求しなくてはなりません。但し、新株予約権について別段の定めができる旨が会社法で制定されています。
また、現在の会社法では、募集事項は募集ごとに均等に定めなくてはならないとされています。例えば、取締役や従業員にインセンティブ報酬として付与する場合、各人の行使期間に差を設ける場合などに、手続きが煩雑になるケースが考えられます。
■その他募集事項と同時に検討すべきこと
・払込みの条件、払込金額が募集新株予約権を引き受ける者にとって、特に有利な場合に取締役が株主総会において、当該募集を必要とする理由を説明すること
・種類株式発行会社において、新株予約権の目的である株式の種類が譲渡制限株式である場合には、当該種類株主による種類株主総会の特別決議を要すること
・株主総会の特別決議により、募集事項の決定を取締役・取締役会に委任することが認められること
・募集新株予約権の目的である株式が譲渡制限付株式、もしくは譲渡制限新株予約権の募集の場合、割当先の決定には原則として株主総会の決議を要すること
以上、ご自身で経験しないとなかなかピンとこない内容かも知れませんね。私は過去に何度もただの紙切れとなったストックオプション契約書がありました。でも付与される立場の時は、いつも将来を夢見て”わくわく”したのも事実ですし、発行する経営者の立場になってからは、役員や従業員たちに”わくわく”を伝えたくて、懸命に設計に携わったことがあります。 法務コンサルタントの立場となった今でも、会社法の中でもとても良い制度だと考えています。
ストックオプションの主な手順や評価などについては、当事務所のHP上でもご案内していますので、興味があれば下記リンクからご参照ください。
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