明日からの経営に役立つ!会社法を学ぼう Part 16

A-6前回に続き、新株予約権について、具体的な発行手続きや特徴についてコメントします。

まず、新株予約権の大きな特徴について、挙げてみます。
①有償発行と無償発行があること
これは、前回挙げた資金調達を目的とするならば、有償発行あるいは社債として有償の発行となるでしょう。 一方、社員や取締役へのインセンティブ、あるいは敵対的企業買収の防衛策として既存株主へ発行する場合などは無償発行がメインとなるのではないでしょうか。このように、目的やその効果に合わせて、選択して発行することができます。

②自由に譲渡できること
新株予約権者は、会社法上は新株予約権を行使することにより、自由に譲渡できます。その例外としては、下記が挙げられます。
・取得について、会社の承認を要する旨を定めた場合
・新株予約権付き社債については制限あり
おそらく通常インセンティブとして付与される場合は、譲渡制限付き新株予約権の制度が設けられています。

次に発行手続きについてですが、新株予約権の発行の手続きは、募集株式の発行とほぼ同じです。しかし、下記のみ異なる点となります。
①自己新株予約権の処分については、募集の手続きによって行う必要がない
②払込期日は定めなくても良い
③払込みをしなくても、割当日に新株予約権者になれる
④払込みについて会社が承諾すれば相殺が認められる

そして、新株予約権の発行については、既存株主に不利益を与える恐れがあるため、事前、事後にそれぞれ株主特有の権利を行使することができます。
・事前には、募集新株予約権発行差止請求権があり、これは株主が会社に対して請求することができます。
・発行後には、募集新株予約権の発行の効力そのものを争う手段として、募集新株予約権無効の訴えと募集新株予約権発行不存在確認の訴えの2つがあります。

私はこれまで、実際に新株予約権を様々な立場で付与されたり、あるいは自ら設計したり、この制度を活用してきました。特に社員や取締役にインセンティブとして活用する際に、何よりも大切だと思うのは、ずばり経営者あるいは経営陣のIPOに対する熱い思いやその目的が割当てを受ける社員らにきちんと伝えることができるか、ということです。
この点を疎かにしては、いかに立派な新株予約権制度を作ったとしても、あまり意味をなさないのではないでしょうか?
社員一丸となってIPOを見据え、自分たちの力以上のものを発揮していく原動力となるなら、この制度は大変有益なものとなるでしょう。
そうは言っても、現実にはいろいろ難しいのも事実ですが・・・。

もし導入を検討してみたいという方があれば、お気軽にお問合せください。

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