明日からの経営に役立つ!会社法を学ぼう Part 6

A-9株式会社は、その発行する株式について、どのような範囲で「譲渡制限」を設けているかによって、公開会社と非公開会社に分類されます。この「譲渡制限」を設ける意義は、会社によって株主間の個人的な信頼関係が重視され、好ましくない者が株主になることを排除したいというニーズがあるからです。

そこで、会社法では、株式会社は発行する全部または一部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨を定款に定めることができるとされています。第6回は、この「譲渡制限」株式について、導入の方法や承認期間、効力などの詳細について、コメントしていきます。

さて、 まずは下記2つの分類を見ていきましょう。
①公開会社
発行する一部の株式について、「譲渡制限」を設けている株式会社または発行する全部の株式について「譲渡制限」を設けていない会社を指します。つまり、一部でも「譲渡制限」の設けていない株式を発行していれば、公開会社となります。

②非公開会社
発行する全部の株式について、「譲渡制限」を設けている株式会社のことを指します。通常のスタートアップでは、こちらを選択するケースが殆どでしょう。

■譲渡の承認期間の設定
「譲渡制限」株式の譲渡を承認するか否かを決定する機関は、取締役設置会社の場合は取締役会、非取締役設置会社の場合は株主総会が原則として承認機関とされます。 但し、定款で別の定めを置くことも可能で、例えば代表取締役に指定することもできます。 会社の機関や経営の状態に応じて、設定されることをお勧めします。

■「譲渡制限」株式の譲渡の方法
たとえ「譲渡制限」株式であっても、究極的には株主は、当初意図した譲渡先か、あるいは会社の指定する買取人や会社自身に対して、株式を譲渡することができます。特に一人会社では、他の株主の利益保護を図る必要性が無いため、例え定款に特別の定めがあったとしても、その機関の承認を得なくても、有効とされた判例があります。

■「譲渡制限」株式の譲渡の効力
会社の承認機関が承認しない場合、その譲渡は会社に対して効力を生じませんが、当事者間では有効であるとの判例があります。一方でこの場合、会社は譲渡人(譲渡した人)を株主として扱う義務があるので、注意が必要です。

■株式譲渡の方式と対抗要件
現在の会社法では、基本的に株券を発行しない方式である株券不発行会社が原則です。この場合、株券の交付がないため、意思表示のみで株式譲渡が可能となります。但し、第三者や当該会社に対抗するためには、株主名簿の名義書換が要件となります。

いかがでしょうか。「譲渡制限」株式を採用することにより、ベンチャー企業の立上げなどの際に、株主間で親密な関係性を保持して、会社経営を安定化させる役割を果たすことができます。一方で現実的には、譲渡制限の効力よりも、株主の権利を重視する判例が多く出ているようです。 いづれにしろ、会社と株主との間でも信頼関係を保てるようにすることが大事ですね。 次回は、「譲渡制限」株式にも関連する「株主名簿」について、コメントします。

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