明日からの経営に役立つ!会社法を学ぼう Part 5

J8Y2RBV4WF会社法においては、各株式の権利の内容は同一であることを原則としながらも、すべての株式の内容として特別なものを定めること、および権利の内容の異なる複数の種類の株式を発行することを定めています。今日は、この株式の多様性と言える「種類株式」についてコメントします。 そもそもなぜ株式の多様性を認めているのでしょうか? それは、株式による資金調達の多様化や、支配関係の多様化の機会を株式会社に与えているためです。

さて、現在内容の異なる種類の株式として認められているのは、9つの事項に限定されています。まずはこの事項について、それぞれ簡潔な説明とポイントをみていきましょう。

①剰余金の配当
②残余財産の分配

剰余金の配当と残余財産の分配について、いづれか又は双方が他の種類の株式よりも優先的な地位が与えられる株式を”優先株式”といい、劣後的な地位が与えられる株式のことを”劣後株式”と言います。これに対して、標準となる株式の事は”普通株式”と言います。 また、剰余金の配当については優先するが、残余財産の分配については劣後するというような”混合株式”の発行も認められています。
実際に多く発行されているのは、剰余金の配当に関する優先株式です。想定されるケースとしては、経営にあまり興味のない株主に関して、議決権を制限する代わりに剰余金の配当を有利にするというような場合でしょう。

③議決権制限種類株式

株主総会において、議決権を行使する権利を制限する株式です。また、株主総会のすべての決議事項について議決権のない株式”無議決権株式”の発行も認められています。なお、公開会社においては、議決権制限種類株式の数が、発行済株式総数の2分の1を超えた場合には、会社は直ちに、それを2分の1以下にするための措置を取らなくてはならないので、注意が必要です。

④譲渡制限種類株式

株式を譲渡する場合、取締役会もしくは株主総会など会社の機関の承認を得る必要がある株式の事です。会社が発行するすべての株式が譲渡制限種類株式の場合は、未公開会社となり、一部でも譲渡制限のない株式を発行している会社は公開会社となります。

⑤取得請求権付種類株式

株主から会社に対し、その株式の取得を請求することのできる権利がある株式のことです。実際には、株主から会社への請求時に株主に対して金銭が交付される償還(買受)にあたります。

⑥取得条項付種類株式
⑦全部取得条項付種類株式

会社に一定の事由が生じたことを理由に、会社がその株式を強制的に取得することができる権利のある株式です。また、株主総会の特別決議により、その種類の株式の全部を取得することができるという内容の種類株式を発行することもできます。この種類株式を活用すれば、倒産に瀕した株式会社において、100%減資をして、それにより会社の円滑な事業再建を可能にすることが考えられます。

⑧拒否権付種類株式

この種類株主は、代表取締役の選定、株式や社債の発行、重要財産の譲受けなど、会社の重要な決議事項について拒否権を持つことになります。通常”黄金株”と呼ばれ、合弁会社やベンチャー企業においては、特に使い道が多いと思います。また、上場企業も利用が法的に制限されている訳ではないので、敵対的買収の防御策としての役割もあるでしょう。

⑨種類株主総会での取締役・監査役の選任

この株式を発行した会社では、全体の総会ではなく、各種類の株主総会単位で、取締役、監査役が選任されます。この方法はアメリカで広く採用されている方式を日本にも取り入れたものです。

9つもあるのかと驚かれた方もいるかも知れません。基本的には、定款で定める必要があり、あるいは株主総会の特別決議が必要な株式もあります。また、運営においても、株主総会の手続きなどが煩雑になるというデメリットもあります。 ですので、安易に考えずに、今おかれている会社の状況に応じて、必要な場合に検討することをお勧めします。

当事務所では、資本政策の立案に合わせて、最適な種類株式の設計もしておりますので、興味のある方は参照してみてください。

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