明日からの経営に役立つ!会社法を学ぼう Part 21

7月前回ストックオプション制度の発行について、第三者割当てについてコメントしましたが、今回は株主割当てについて少し詳しく見ていきます。第三者割当てと同様に、株主割当ての方法で発行されることがありますが、その場合は社債とともに発行されることが多いようです。

この株主割当ても、目的によって割当ての方法を変えることができます。すなわち、株主に対して払込みをさせるケースと、払込をさせない無償割当てとするケースがあります。 まずは、株主に払込みをさせる一般の株主割当ての発行について、簡潔にまとめてみました。

■意思決定機関:全株式譲渡制限会社(未公開会社)の場合は、株主総会の特別決議
        公開会社の場合は、取締役会の決議

■定款に定める方法:募集事項
         株主に募集新株予約権の割当てを受ける権利を与える旨
         募集新株予約権の引き受けの申し込みの期日

一方で、無償割当てとするケースは、以下の目的で発行されることが考えられます。

■目的:
・ライツ・イシュー:株主割当ての方法による募集株式の発行等に際し株主が当該割当てを受ける権利を実質的に譲渡できるようにするため。これは、割当てを受ける権利には経済的な価値があり、株主にとって、この権利のみを売却、換価できれば便利となるためである。

・ポイズン・ピル:敵対的買収に対する防衛策として用いる場合。投資ファンドによる敵対的企業買収を阻止する目的で、株主に対し新株予約権無償割当てがなされ、当該新株予約権の行使の条件として、当該投資ファンドは行使できない旨の差別的行使条件がなされたケースで、「株主平等の原則」の趣旨が及ぶとされ、株主総会が判断すべきとの判例が出ている。

こうしてコメントしても、私自身当事者として関わった訳ではなく、新聞等の記事で見かけることがある程度です。ちょっと難しい概念ですので、実際の事例でもう少し研究したいテーマです。以上、新株予約権の発行について、主に2種類に分けてみてきました。

さて、発行後の流れとしては、申込み・割当てがなされ、申込者の払込みによって発行会社の会計処理が変わります。
 
■申込み・割当て
・基本的には募集株式の発行等の手続きと同様で、募集事項等の通知がなされ、次に株主による申込みが行われ、会社によって新株予約権が割当てられます。

■登記:募集新株予約権については、その払込みをまたず割当日に申込者は新株予約権者となり、新株予約権の発行後2週間以内に、その登記をしなくてはならないので注意が必要です。これは、登記事項である発行済み株式総数に関係する事項となるからです。登記事項は下記となります。
①新株予約権の数
②新株予約権の目的たる株式の種類・数
③権利行使価額・行使期間その他行使条件
④取得条項付きである場合それに関する事項
⑤募集新株予約権の払込み金額等

■払込み
新株予約権が無償で発行される場合を除いて、募集新株予約権の割当てを受けた者は、払込み期日を定めた場合には、当該期日、その他の場合は行使期間の初日の前日までに、会社が定めた払込取扱金融機関において、払込金額の全額を払い込まなくてはなりません。この期日までに払込みをしない場合は、当該募集新株予約権は行使できないものとなり、当然に消滅してしまいます。

■会計処理について
①新株予約権者によって権利が行使されるか確定前
 会社の貸借対照表の純資産の部の「新株予約権」という項目に計上
②権利が行使された後
 権利行使価額と併せ、資本金および資本準備金に振り替えられる
③権利が行使されずに行使期間が満了
 事業年度の利益に計上される

また、ストックオプションの費用計上として、新株予約権が金銭の払込みを対価とせず、取締役等の職務執行等を対価として発行された場合には、貸方に「費用の発生」を計上します。具体的には、当該新株予約権の付与日現在のおける公正な評価額を、対象勤務期間の費用として計上しなくてはならないので、注意が必要です。

以上、新株予約権の発行から、発行後の手続きの概要についてコメントしました。特に会計処理については、初めての導入の際には注意が必要ですね。新株予約権は、資本政策を検討する際にも、必ず考慮する仕組みです。 導入までは大変かもしれませんが、取り入れてしまうと様々なメリットを享受できる仕組みなので、ご検討されることをおすすめします。

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