DES(デス)の活用は難しいのデス!Part.1

DESという仕組みがあるのをご存知ですか?正式には「デットエクイティスワップ」という何とも覚えにくい名称なので、俗に「DES」(デス)と呼ばれることが多い制度です。私がこのキーワードを初めて耳にしたのは、確か2002年頃でした。当時某上場企業の経営戦略を担当していたのですが、その社長から「中山さん、デットエクイティスワップというすごい仕組みがあるから、勉強した方がいいよ!」こんな感じでした。ところが、財務諸表の作成方法をようやく身に付けようとしていた私のレベルでは、貸借対照表に関連する新たな仕組みはちょっと歯が立たず、そのまますっかり忘れていました。そして、DESとは、大企業と銀行との間で行われるもの、という印象のままでしたし、その後私自身が関わった企業は債務を抱えていなかったため、DESの検討を一度もしたことがありませんでした。そして、最近になって、初めてDESの実行を検討してみましたので、私の経験を踏まえご報告です。

「デットエクイティスワップ」とは、債務の株式化のことですが、その名の通り、借入金(DEPT)を資本(EQUITY)に交換(SWAP)することです。皆さんの頭の中にスッと貸借対照表が浮かぶかわかりませんが、通常貸借対照表は、左側に資産、右側に負債と資本、を計上し、それぞれがバランス(左右が同じ金額)するので、バランスシートと呼ばれます。この右側にある負債の項目の金額が資本の項目にスライドする、そんな手続きを取ることになります。 改正後の会社法では、借入金の返済期日が経過し、かつ、借入金額以下で現物出資をする場合には、検査役の検査も、税理士等の証明も不要になりましたので、これまでよりはるかに「DES」が活用しやすい状況になったのです。

では「DES」を活用すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか?

【メリット】
・自己資本比率があがる
・有利子負債が減ることで利息が減少する
・資本金が増えると対外的信用度が上がることがある

従来は借入金を資本金に振り替える場合は、現物出資価額500万を超えるケースなど、裁判所で選任された検査役による財産価格の調査が義務付けられていたため、一般的な採用が大変難しいものでした。では、改正後はどのようなシーンで活用できるのでしょうか?

【導入事例】
・相続税対策
社長が会社へ貸し付けをしている場合、貸付金も相続の対象になりますが、相続人は実際には返還される見込みのないケースでも相続税が発生することになります。そういうケースでは、貸付金を資本金に振り替えることで、より有利な(貸付金額よりも低い)評価をすることができます。

・融資を受ける時
自己資本比率が低いと、銀行の与信審査に不利になります。そこで、社長が会社へ貸し付けしていれば、その金額を資本へ転換することで、自己資本比率を上げることができます。

・出資を検討する時
外部資本の受け入れの際は、必ず資本政策の検討が必要ですが、自己資本比率が低くなると、経営が安定しません。もし社長や役員が貸し付けをしていれば、DESによって出資前に自己資本を上げることも検討できます。

このように社長が会社へ貸し付けている場合は、メリット多くて良いことばかりに思えますね。しかし現実はそんなに甘くありません。税務面で様々な検討が必要となり、やはり導入には難易度がありました。以下は一般論としての税務課題で、詳細は会計士の先生などにケースバイケースで確認する必要があります。私も、個別案件では、公認会計士の先生と相談しながら進めました。

【検討すべき点】
・株主構成の変更や株価の上昇により、他の株主への贈与にあたらないか、検討する必要あり
・取引自体非課税の取り扱いとなるので、債権者にとって納付税額が増える可能性あり
・資本金が増えることにより、一定額を超えると法人住民税や外形標準課税の対象となることがある
・現物出資された債権の額面と債務の時価評価額との差額が「債務消滅益」となり課税対象となる

そして、今回一番学んだポイントとしては、「DES」により資本金に組み入れることができる金額は、「DES」時点の債権(借入金)の時価のみです。ここでいう債権(借入金)の時価とは、原則として「DES」時点で債務者が即時返済可能な金額のことを言うそうです。つまり会社が返済できる金額のみが対象となる前提で、そうでなくては資本金の額を増やすという目的を達成できない、ということでした。

ところが、そのようなケースでも、クリアできる方法がありました。ずばり「疑似DES」というアプローチです。長くなりましたので、次回コメントします。

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ