DES(デス)の活用は難しいのデス!Part.2

「DES」という制度について、平成18年の会社法の改正により利用しやすくなったけれども、実際の活用にはハードルがあることを前回コメントしました。ところが、「DES」と同じ効果が得られる方法として、「疑似DES」という手法が存在し、こちらははるかに活用の幅が広いので、本日はこの制度についてコメントします。

まずは「DES」の活用についてのおさらいです。そもそも「DES」とは、借入金を資本金に振り替えることを指します。通常は、企業の財務状態が悪く、借入金の返済が難しいケースに実行を検討する価値がある制度です。そして方法としては、債権者が、その債権をその債務者の会社に現物出資という形で出資し、その対価として株式を受け取るというスキームになります。 

では、債権者、債務者それぞれの立場から見たメリットを簡単にまとめてみます。

・債権者のメリット
債務の回収が見込めないケースにおいて、債権放棄よりも将来の回収が見込める手段となり得ます。例えば、将来の企業再生や業績向上などを通じて、株式に転換していれば、配当やキャピタルゲイン(売却益)などの可能性があるからです。債権者としては、銀行などの金融機関や、企業経営者などが考えられます。

・債務者のメリット
まずは債務が減少するので、債務利息もなくなります。また、資本に振り替えるので、バランスシート(貸借対照表)が改善されます。仮に債務者がその企業の経営者の場合は、自己資本率がアップするというメリットがあり、債務者が銀行など外部の場合は、経営に資本家として参画してもらい、経営に対する支援が期待できるかもしれません。

ところがこの「DES」は、債権を現物出資という形で転換するため、様々な税務リスクを抱えることになることを前回まとめました。そしてより安全に選択できる方法として、「疑似DES」という手法があります。この2つは何が違うかというと、実際に債権者が「現金」を払い込んで債務者から株式発行を受け、債務者はこの払い込んだ現金をもって債務を弁済するという形になります。

つまり、現物出資ではなく、現金を介在させることにより、会社法上は、通常の現金による出資と同じ手続きを取ることになります。そのため、債権者には譲渡損は発生せず、債務者側にも債務消滅益が発生しません。

具体的な事例を想定してみましょう。経営者が自社へ貸し付けをしている場合、最初に金融機関などから新たな資金を作り、自社へ出資(増資)します。そして、自社に増えた現金により、貸付金を経営者へ返済するという流れになります。

ただ、このスキームにも1つ課題があります。課税関係が生じないのがこのスキームの良さではあるのですが、「擬似DES」を利用する目的が租税負担を減らす目的で、当初から計画された一連の取引と認められる場合は、通常の「DES」と同様の処理が認定され債務消滅益が発生することになります。

では、具体的にどうやれば一連とみなされないかということは明確に規定されているわけではないですし、どう処理するかという判断は、それぞれのケースによることになりますが、例えば出資の時期と決算期をまたいで返済する方法や、返済を数回に分けて少額づつ返していく方法などが考えられるとのことでした。

いかがでしょうか。「疑似DES」についてご理解いただけましたでしょうか? 実際に導入する際の実務としては、臨時株主総会を開き決議する形式を取りますが、下記の必要な書面を作成します。
・臨時株主総会議事録
・募集株式の引受申込書
・資本金の額の計上に関する証明書

企業に借入金があり、財務的に厳しい状況に置かれている場合には、この制度の活用を検討してみると良いかも知れません。

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