米国のAIビジネスの脅威とは?~イノベーションの成功の秘訣Part 12
前回のブログで、「AIビジネスの本当の脅威」とは、ずばり米国巨大IT企業の覇者争いにあるとコメントしました。”シンギュラリティ”が起こるか否かは、専門家でも意見が分かれるところですが、AIのプラットフォームを制する企業が、今後の世界経済を左右する存在になり得ることは、いづれ誰の目にも明らかになるでしょう。
さて、コメントを続ける前に、2つのKeywordを把握すると理解しやすくなるので簡単にご説明します。まず1つ目のkeywordは”プラットフォーム”です。通常ITにおける”プラットフォーム”とは何を指しているかというと、コンピューターにおけるOS(基本ソフト)やハードウェアといった、いわゆる基礎部分を指しています。もっとコンパクトに捉えると、OS上で動作するソフトウェアの動作環境を指すこともあります。転じてAIの世界では、特定のプラットフォーム上で、そのプラットフォームに準拠したソフトが動くことにより、様々なAIサービスが提供されていくというイメージになります。
そして、2つ目のkeywordとしては、”ビックデータ”です。大量のデータだろうということ予想できると思いますが、単に大量であるだけでなく、従来のデータ処理方法では処理しきれないほどの、複雑かつ巨大なデータ集積群のことです。では具体的にどのくらいのものを指すかというと、取り扱う側の処理能力や組織といったものに依存するので一概に定義することは難しいのですが、この”ビックデータ”の内容が出来るだけきれいなデータ(正しいものと言い換えても良いかもしれません)で大量にあればある程、AIの能力が格段にアップしていくことになります。
この2つのKeywordを頭に入れておくと、現在のAIビジネスにおける覇権争いの状況が、少しクリアに見えてくるかも知れません。さて、話を戻すと、AIプラットフォームを巡る覇権争いは、米国企業が大きくリードしています。今は”GAFA”と呼ばれるIT企業が頂点に立っており、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社のことを指します。 この4社はそれぞれ、高い技術力に加え、独自のビックデータを現在もこれからも保有し続けていることが、何よりの強みと言えるでしょう。そしてこの4社の中でも最もリードしているかのように見えるのが、やはりグーグルです。
グーグルは自社向けに開発した機械学習ソフトウェア”TensorFlow”をいち早くオープンソース化(世界中の開発者に無料で提供すること)し、一気に世界のAIライブラリとしてトップに躍り出ました。これは、スマホで”アンドロイドOS”をオープンソース化してプラットフォームの覇権を握ってきた構図と同じです。マイクロソフトやアマゾンも自社のライブラリをオープンソース化して続いていますが、果たしてこの分野では、どこがAIプラットフォームを制覇するのか、米国勢の勢いは当面続きそうですね。
また、会話型コンシェルジュについても、各社がしのぎを削っている状況です。残念ながら、今の技術では自然な会話には程遠いのが現状で、皆さんもスマホなどで利用して、ついイラっとすることがあるのではないでしょうか。あるいは、ペッパーと会話して、がっかりしてしまうとか。この分野においても、”グーグルアシスタント”が一段上との評価もありますが、果たして今後はどうなることでしょうか。
最近のニュースで目立ったのは、”Siri”(Apple) VS ”Alexa”(Amazon echo)の音声アシスタント対決の構図です。”Siri”は徹底してApple社だけがコントロールできるクローズドなシステムですが、一方で”Alexa”はオープンなシステムで外部の開発者もプログラミングすることができ、様々なデバイスに組み込むことが出来るのが特徴。しかもクラウドベースになっています。
また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが”NVIDIA”(エヌビディア)というGPUメーカの株を約40億ドル分も保有しているニュースが話題となりました。 良質なビックデータを集めれば集めるほど、AIシステムは賢くなり他社を圧倒できるようになるのですが、そのためには高速に並列処理できるシステムが必要となります。これを解決するディープラーニング向けのGPU,言い換えると高速処理できる半導体を開発したのが、この米国の”NVIDIA”(エヌビディア)という会社。この会社が、新たな時代の自動運転プラットフォームのキーデバイスの覇者となる日はもうすぐそこまで来ているのではないでしょうか。
米国においては、IBMやマイクロソフトなどITガリバーの動きも目が離せませんが、一方で専門性の高いAIベンチャーも続々と生まれています。米国の状況は今後も世界のAI業界をリードしていくことでしょうから、また違う角度で取り上げてみたいと思います。また中国市場においても、百度やアリババといった巨大企業の動きから目が離せません。特に”アリペイ”と呼ばれるモバイル決済によって、独自のモバイル経済圏が生まれ、中国は独自の進化を遂げようとしているように見受けられます。これら米国勢や中国に対し、日本企業はどのような展開をしているのか、実はかなり期待できる分野もあり、またの機会にコメントしたいと思います。
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