初めて事業承継を考え始めた経営者の方へ

白い花103先日勉強会に参加してきましたので、このテーマについて考察してみました。参加したのは、”相続事業承継ネットワーク”という士業が連携してトータルサービスを提供しているグループの勉強会で、私と同じ西福岡支部の先輩行政書士の先生が代表を務めておられます。パネルディスカッションでは、弁護士の先生2名と税理士の先生1名による、事業承継の基礎的なお話と、失敗事例によるケーススタディ、グループディスカッションという内容でした。 そこで、セミナーで気になったポイントと、経営コンサルタントの視点で経営者に向けたアドバイスについてコメントします。

■事業承継のポイント
・人的資産、物的資産(株式)をそれぞれ検討
・とにかく早めに下記4つの側面から、必要な対策を講じる
・対策ごとに民法、税務両面から、リーガルチェックやリスクを詳細に検討する

■事業承継対策としての4つの柱
①納税財源確保対策
・相続人ごとの納税資金の確保・・・現金でいくら必要かシミュレーションする

②財産移転対策
・暦年贈与による移転・・・基礎控除▲110万円を活用し、生前贈与を時間をかけて実施

③遺産分割対策
・後継者以外の相続人や遺留分・・・公正証書遺言書等で被相続人の意思を明確にする。減殺請求分を配慮し、生命保険の活用も検討

④評価引き下げ対策
・株価の評価引下げ対策・・・状況に応じて各種対策を講じたり、不動産の活用も検討

■会社の承継における主なリスク
・人的側面では、後継者に社内外の人材とうまくいかない、紛争が起きるケースが考えられる
・物的側面では、株式が相続によって分散化する場合、経営が不安定になる可能性がある
・自社株の評価が上昇している場合、大きな相続税が発生してしまう

■会社承継の主な対策
・相続が発生する前に、就業規則や体制を整えておく
・被相続人が遺言を作成し、その意思を経営陣などに生前に伝えておく
・自社株を後継者へ生前贈与のスキームを使い、少しづつ移転しておく

■自社株の算定方法(税務対策のアプローチ)
①株主の判定・・・議決権があるか否かなどの確認
②会社規模の判定・・・売上、社員数などの確認
③株価算定をする
「類似業種比準価額方式」・・・配当、利益、純資産や日経平均などから算出
「純資産価額方式」・・・時価ベースで貸借対照表などから算出
*M&Aが絡む場合は、「DCF方式」(ディスカウントキャッシュフロー)が主流で、5ヵ年PLを基に算出

■経営上のその他のリスク
・相続がスタートすると株式は共有財産となる
遺産分割協議書が完了するまで、相続人は株式の売却や譲渡などの権利行使ができません。実質的に会社経営者が相続人であっても、自由に権利を行使できないので、注意が必要です

・議決権行使は、相続人の過半数以上の同意が必要となる
2人以上の共有になった場合、株主の相続人間で、相続分の過半数の同意をもって、株主総会等において会社に対して議決権を行使する者1名を定めて、会社に対してその者の氏名又は名称を通知することにより、以後その議決権を行使する者として定められた者が、株主総会等において議決権を行使することになります

・株式譲渡制限は、相続には適用されない
相続人は、会社の承認を得ることなく、株式を相続したことを会社に主張することができ、株式の名義書換も、株式を相続したことを証する資料を会社に提出することで、単独で名義書換を請求することが可能となりますので、会社にとって好ましくない相手が株主になるリスクがあります

■経営上のその他の対策
・株式交換や会社分割のスキームを使い、資産を分散しておく
親子会社にしたり、ホールディングカンパニーを設立したりして、生前のうちに後継者へ引き渡す方法があります

・種類株の発行をする
優先株、複数議決権株式、黄金株などを発行することで、経営の安定化や買収に備える方法があります

・定款を整備する
会社の定款によって、相続が株主に発生したら、相続人から会社が株式を買い取れるよう定めることで、株式が分散することを防止することができます

以上、相続の中でも特に難しいテーマですが、失敗しないためにはとにかく早め早めに専門家の協力で準備をすすめることですね。相続で揉めることは良くありますが、会社が絡むと株主・社員・取引先・顧客と、大変なダメージが生じます。もし事業承継にお悩みだったり、M&Aをご検討なら、すぐに専門家へご相談ください。

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