事業承継における自社株は要注意② 会社法を学ぼう Part23

前回に続き、勉強会で学んだ事業承継対策について、自社株にフォーカスして、より詳細に検討してみます。前提として、非公開会社(全株式の譲渡制限がある会社)の経営者(オーナーなど)が事業承継を検討しているケースで、相続させたい後継者以外にも法定の相続する権利を持つ相続人がいる場合です。
例え公正証書遺言などで、経営者が後継者に自社株の全てを相続させる等の遺言を遺しても、他の相続人に遺留分が発生する場合、遺留分減殺請求という形で、被相続人の意図通りにはならないことがあるのです。そこで、会社法に定められている方法を活用し、後継者が経営をうまくコントロールできるように事前にできる対策を見ていきましょう。

実は会社法では、各株式の権利の内容は同一であることを原則としています。しかし、事業承継対策として検討できる方法は、この例外として認められている特別な方法が考えられます。これは株式の多様性を認めることにより、株式による資金調達の多様化と支配関係の多様化の機会を株式会社に与えるため、新たに会社法に定められました。

まず最初は、会社法108条に定められている「種類株式」の活用です。通常は普通株式が発行されますが、9つの事項に限って内容の異なる種類の株式の発行が認められています。今回はその中で、事業承継に導入しやすい方法を2つ挙げます。

①「議決権制限株式」を発行(108条1項3号)
これは、相続によって承継される株式に対し、経営に参画させたくないという意図がある場合に活用できます。その場合は同時に、1号の「剰余金の配当」2号の「残余財産の分配」のいづれか、或いは双方について、他の種類の株式よりも優先的な地位を与えられる「優先株式」としての発行を組み合わせれば、受け手の方とのバランスが取れるでしょう。
ちなみに、「議決権制限株式」にも2つの種類があり、総会決議事項の全ての事項につき一切の議決権がない「完全無議決権株式」と、一定の事項についてのみ議決権を有するものとがあります。

発行方法は3つで、簡易な方法から挙げておきます。
1.新たに「議決権制限株式」を無償割当て
  決議は株主総会の普通決議もしくは取締役会だが、その結果定款変更が必要となり、株主総会の特別決議が必要となる。
2.普通株式の一部を「議決権制限株式」に変更
  決議および定款変更で、株主総会の特別決議が必要。普通株式、変更となる株式、全ての株主の同意が必要となる。
3.新規に「議決権制限株式」を発行
  決議および定款変更で、株主総会の特別決議が必要。資金が新たに必要となる。

②「拒否権種類株式」を発行(108条1項8号)
これは、相続させたい後継者に経営の支配権に関わる十分なシェアが実現できない場合に活用できます。いわゆる”黄金株”と呼ばれるもので、1株でも株主総会で多大な影響力を持つことができます。 この種類株式には、株主総会、取締役会および清算人会のすべての決議について拒否権を与える方法と、ある一定の決議について拒否権を与える方法の2通りの種類があります。ある一定の決議として拒否権を発動できる対象としては、代表取締役の選定、株式や社債の発行、重要財産の譲り受けなど、株主総会の重要な決議事項などがあげられるでしょう。 

発行については、定款で以下の事項を定めなくてはなりません。 
1.当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項 
2.当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めたときは、その条件

以上、会社法の「種類株式」を活用して、事業承継における対策を少し詳細にご案内しました。また、もう一つの方法として、全株式譲渡制限会社における「属人的な定め」を活用する方法があります。種類株式と違って、株式ごとの違いを定めるのではなく、株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定款で定める方法ですので、より柔軟性があると言えるでしょう。長くなりましたので、次回じっくりとご案内しますね。

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