納得!「遺言執行者」に指名されるということ part.1
「遺言執行者」の役割をご存知ですか? 私がこの言葉を初めて聞いたとき頭に浮かんだのは、横溝正史の『犬神家の一族』の顧問弁護士が遺言書を読み上げ、相続人である娘たちが鬼の形相で言い争うシーンでした。つまり、遺言書を預かり、相続人たちに遺言人の意思を伝える役割だとばかり勘違いしていたのです。ドラマや映画はエンターテインメントですから、遺言が出てくれば、すなわち相続争いが描かれるのが常で、あまりいい印象はないのかも知れませんね。それに象徴的なことしか表現しないので肝心の役割は全くつかめず、イメージだけが先行していましたが、おそらく一般的な認知は同じようなものではないでしょうか?
「遺言執行者」とは、遺言執行の目的を達成するために、遺言者から指定された者か、又は家庭裁判所から選任された者のことをいいますが、ここでは、遺言者から指定されたケースのみを取り上げます。 まずは「遺言執行者」はどのような地位に置かれるのでしょうか? 民法には”相続人の代理人とみなす”とありますが、遺言者の意思を実現する目的で指名されるわけですから、実際は”遺言人の代理人”というのが、現実的な地位と言えるでしょう。そして、実際に公正証書遺言で「遺言執行人」の地位におかれて遺言執行をしたことがある人なら実感できるでしょうが、遺言者本人の意思を継ぐ者として、まるで水戸黄門の印籠を持つような、強い権限と義務を持つことになります。そしてこの制度こそ、公正証書遺言と合わせ、相続争いを回避する大変重要な制度であると実感しています。
ではまず、「遺言執行者」の権限について、見ていきましょう。 相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、そのために相当かつ適切と思われる行為をすることができます。 法的には、相続財産の保存、利用、改良行為ができると定められていますが、以下が具体的な行為にあたります。
・「遺言執行者」の権限
①対象物件や関係書類の引渡し、管理に属する一切の行為
②何人かが遺言執行を妨害しているときはこれを排除する行為
③遺言執行に必要な訴訟提起
④遺言で財産処分の指示がある場合、明示の指示がなくとも遺言の目的・趣旨からすれば換価が必要な場合、相続財産の売却、換価などの処分行為
当然ながら紛争や訴訟にかんしては弁護士の役割となりますが、紛争性が無い場合は行政書士も「遺言執行者」として行為を行うことができます。もちろん、「遺言執行者」は必ずしも法律家である必要はないのですが、相続人を指定してしまうと場合によっては相続争いの原因になってしまうことがあり、財産を取り扱うことを鑑みれば、信頼のおける第三者すなわち法律家が適していると私は思います。
この「遺言執行者」には、権利もありますが、同時に大変重い義務を課せられることになります。そして、公正証書遺言の中で「遺言執行者」に関する内容をきちんと入れることによって、相続争いを未然に防ぐかなり効果的な方法があるのです。 次回は、そのポイントについて、私の体験を交えコメントします。
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