著作権と地域ブランド構築について
先日「クリエイティブ産業と法」という九大の公開講座へ参加しました。以前に音楽レーベルの会社で働いていたので、著作権やJASRACに関しては創作者やそのクリエイティブな環境を維持するためのとても大切なシステムであると捉えています。また投資ビジネスに関わるようになってから、最終的な契約には至らなかったものの、映画やゲームコンテンツのプロジェクトファイナンスを経験したこともあります。そういう意味では、比較的長くクリエイティブ産業に関わってきたこともあり、その成功プロセスの可視化やパターン化の難しさや客観的な評価を得ることの難易度の高さは、特にITビジネスと比較するととても高いものだと実感しています。
大学の講座ですので、著作権教育についての課題や著作権の権利者とは誰かといったやや高尚な議題があり、日頃そのようなテーマで熟考することがありませんでしたので、大変面白く感じました。私の様に創作サイドに近い体験が長いとオリジナル至高主義に陥りがちですが、「模倣」が一定の評価を得るいろんなパターンがあることに気づかされ、一種のグレーゾーンと一面的に捉えていた考えを改めさせられました。例えば、「オマージュ」「本歌取り」「パロディ」などの二次創作は、創作者への価値の認識や尊重があるがゆえに存在するということに、改めて気づいた次第です。こういった「模倣」のプロセスを経て初めて、オリジナル作品を作ることに価値があることの意味を実感することができるのではないか、との示唆に大変共感を覚えました。
全講義の一部しか参加しておりませんが、中でも興味を持ったのは、「地域ブランドの構築と展望」というテーマです。幸い福岡市は人口が増え続け、国家戦略特区のうち「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されていることもあり、地域ブランドを構築するには恵まれているように思われるのですが、実はまだまだ取り組みを工夫していく必要があると気づかされました。地域ブランド構築を成功させるためには、”商品・サービス”に加え”プラスα”が必要で、そのための強力な意思とコミュニティの存在が欠かせないようです。成功事例としては、京の伝統野菜が挙げられていましたが、確かに今や全国区でどこのスーパーでも購入可能な現実を考えると納得させられました。また、八女伝統本玉露、鹿児島の壺作り黒酢、熊本県産い草、唐津焼、久留米絣など、九州発の地域ブランドも続々紹介されました。
そして、知的財産として地域ブランドを守る方法は、現時点で2つありました。
■「地域団体商標制度」2006 年から
特許庁管轄。全ての商品・サービスが対象となり、表示方法としては、「地域名」+「商品名」などで、10年ごとの更新となります。この効力は、登録商標およびこれに類似する商標の不正使用を禁止できます。
■「地理的表示(GI)保護制度」2015年から
農林水産省管轄。農林水産物や飲食料品(酒類を除く)が対象となり、表示方法としては、地域を特定できれば地名を含まなくても良いとされています。但し、品質の保持が条件となり、最低でも25年以上とされています。この効力は、地理的表示およびこれに類似する表示の不正使用を禁止できます。
これらの方法を用いて知的財産権を守る目的としては、下記が挙げられてました。
・海外展開への布石、模倣品対策
・品質の維持、二次産品展開
・伝統産業担い手の確保
・地域コミュニティーの活性化
”博多”というキーワードでは、成功事例として代表的なのはやはり「明太子」でしょうか。或いはイチゴの「あまおう」も様々な2次産品が登場していますね。しかし、博多織などの伝統産業は新たなニーズを開拓できているとは思えず、沢山の魅力的な農産物や商品が地域ではヒットしているとしても、全国区までブレイクしているのは限られていて、少しもったいない気がしますね。
ちなみに山口の日本酒「獺祭」は、デパートでも特設売場を獲得するなど一大ブランドになりました。私はてっきり安倍首相が地元のプレゼントとして紹介したから有名になったのかと思っていましたが、実は東京や海外のレストランに出すために「ライスワイン」として清酒の度数を下げることによって、地元以外の進出が成功し逆輸入のような形でブレイクしたそうです。 戦略というよりも活路を開くためだったのでしょうが、面白い事例ですね。
地域ブランドの構築、本当に興味の尽きない分野です。ファイナンス面でもIT活用という側面においても、大きな可能性を感じています。
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