家族信託制度について考察してみました!

dog present101先日家族信託制度に関するセミナーに参加しました。まだ新しい制度ですが、これから拡大していく可能性がありますので、あくまで私見ですがポイントと思ったことを報告しますね。

このセミナーの主催者は税理士法人の代表の方でしたので、被相続人による〝課税を発生させないようにするにはどうしたら良いか?”という要望を起点とすると、価値の高い制度だと言えます。 特に相続に関連する遺言、遺産分割、後見制度のそれぞれのデメリットをクリアできる手法の一つとして、手軽さにかなり可能性を感じました。 また一方で、家族法の主旨、後見制度の狙いなどを考慮すると、どうしても矛盾する点を意識せざるを得ません。しかし、そういった法の制度からの視点で見てしまうと、この家族信託制度の本来の良さがクリアに見えてこないので、このブログでは、セミナーから学んだ部分を出来る限りそのままコメントしてみます。

まず、家族信託とは、”相続”ではなく、”契約”であるということが大きな違いです。民事信託のひとつで、不動産、株式、債権、金銭、ペット(法律では動産になります!)など、あらゆる財産を対象に、信託財産にすることができます。そして、やはり一番の目的としては、いったん相続税や贈与税から切り離して簡易に進めることができるという点にあると思います。

さて、基本の考え方として、法的に特定の財産の所有権は一つですが、この制度を使うと、一旦”名義”と”権利”に分割され、信託が終了すると、また元の所有権に戻る、というところにあります。 セミナーでは、名義(ケーキの箱)=受託者、権利(中身のケーキ)=受益者と表現されていました。

そして、一旦課税を回避できる基本スキームは、委託者と一次受益者を同一人にすることです。これは目からウロコでした!ただ、一次受益者が亡くなってしまい、受益権が移転すると、その時点で相続税は発生することになります。 さらに、もっとすごい手法として、受益者消滅・発生型信託というスキームがあり、この方法を使うと、法定相続人から遺留分減殺請求を受けることが無くなるのです。どのスキームも図解しないとおそらく理解できないと思われますが、出来る限りこのスキームを説明してみますと・・・。

まず、受益者連続型信託では、受益権という確定した債権が次順位受益者に相続されるので、相続の度に遺留分減殺請求権が発生します。しかし、受益権消滅・発生型信託というスキームだと、受益権という債権は、第2次受益者の死亡時点で一旦消滅して委託者に戻り、第3次受益者は新たな受益権を取得するので、受益権は相続財産とならず第2次受益者の推定相続人に遺留分減殺請求権が発生することがなくなります。うーん、我ながら文章を読み返してもうまく伝わりそうにないですね。すみません。

私が、この制度を利用するニーズが高くなると思われたケースは下記です。
・相続税対策として一時的に回避することを検討している
・認知症のリスクを抱えているが、後見制度の手続きや縛りに障壁を感じている
・障害を持つ家族が相続人の中にいる
・事業承継において、柔軟な方法を取りたい

そして、私がこの制度のリスクとして感じたのは以下の点です。
・最高裁の判例が出ている訳ではないので、上記のスキームでも遺留分減殺請求することができる判決が出る可能性は否めない
・実際の執行や運用に際して、受益者代理人あるいは信託管理人(おそらく、弁護士、税理士、行政書士等の役割はここにあるのではと思います)という役割はあるものの法定されている訳ではないので、担保されずに問題となるケースが想定される
・遺言と違い、契約なので撤回できない(最初に作られた契約が有効となる)
・いづれ将来信託課税が国税として成立する可能性がある

もし、家族信託を先に契約したものの、その後被相続人の気が変わって、新たに法的に問題のない別の指定の公正証書遺言を残しても、やはり家族信託の方が契約として有効なのだろうか、という疑問が残りました。これも判例次第でしょうね。

さて、私自身がなぜ家族信託に興味を持ったか、その理由は、”事業承継”の手法として有効ではないかと思ったからです。コーポレートガバナンス(企業統治)という面から企業価値を上げていくには、ますます所有と経営は分離する方向へと求められていくでしょう。そうした流れの中で事業承継を考えた場合、所有権を名義と権利とに分割する方法は、親和性が高いように思われたからです。いづれにしろ、まだ新しい制度なので、事例研究しながら検討したいと考えているところです。

最後に、もっと具体的にスキームを知りたいという方は、セミナーでも使用していた下記の本が良さそうです。
家族信託活用マニュアル

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