事業承継における自社株は要注意!会社法を学ぼう Part22

先週末久しぶりに勉強会に参加しました。テーマは「早期の事業承継対策の必要性」で、税法と民法の違いやその対策法についてのお話は大変興味深いものでした。民法の分野となりますが、遺留分減殺請求の課題、生前贈与が特別受益として相続の基礎算定に考慮する恐れがあること、生命保険の活用など大変勉強になる内容でした。

さて、そのお話の中でもかなり時間を割いていたのが、自社株の問題です。そこで、自社株にフォーカスして、私自身の経験も踏まえ簡単にまとめてみることにします。

事業承継と言っても事業の規模やステージによって様々なケースがあるかと思います。ざっくり分けると、①親族内承継 ②親族外承継(役員・従業員など) ③M&Aの3つでしょう。20年前は中小企業の事業承継は、①の親族内承継が90%を超えていたそうですが、近年は②の親族外承継が4割を超えるそうです。いわゆるMBO,EBOと呼ばれる手法ですが、後継者がいない場合に、M&Aなどで他社に企業売却するよりは、従業員や役員らに承継させたいというニーズが増えているのでしょう。ちなみに私は、③のM&Aを当事者として数件経験しています。

どのケースにも共通する経営者がすぐに取り組むべき事業承継対策としては、先ずは下記です。
1.自社株の株主が分散されていれば、出来る限り集中させる
創立時に多くの出資者によって会社設立させた場合、まれに数十名以上の個人株主がいるケースがあります。名義株と言って実態は議決権を行使しない場合が多いのでしょうが、出来得る限り個人株主から会社が買い取る等の手続きをして、集中させる手続きをしておきましょう。経営者が健在なうちはそれほど問題が表面化せず、あっても話し合い等で解決できるケースが殆どでしょうが、事業承継後は深刻なトラブルの種になってしまうおそれがあります。
私が知るケースでは、200名を超える個人株主を抱えた企業がありましたが、当然株主管理コストも膨大でしたし、事業承継後の経営陣が大変苦労されていました。 また、私自身某株式会社の株主であることをすっかり失念していたのですが、10年以上経過してその企業の役員より自社株を買い取りたいとの申し出がつい先日ありました。時間を要したのは私が東京から転居して住所不明になったせいでしょうが、対応している企業の方は本当にご苦労されているようでお気の毒でした。

2.相続の対象となる自社株は、必ず相続人(後継者)を遺言で指名しておく
もし遺言などで遺しておかなかった場合、その株式は法定相続分にしたがって準共有となってしまいます。この場合株主総会において議決権を行使しようとすると、共有持分の過半数で決定することになるのですが、もちろん経営上は不安定となりかなりのリスクと言えます。オーナー経営者であればもちろんのこと、そうでなくても必ず指名して、公正証書遺言などできちんと意思を示しておきましょう。

3.自社株が遺留分侵害となる恐れがあれば、具体策を講じる
平成28年に「経営承継円滑化法」が施行されました。これは後継者が、経営者から贈与を受けた株式について、事前に後継者以外の親族と合意し、経済産業大臣の確認を受けることにより、遺留分放棄の法的確定に係る家庭裁判所の申請手続を単独で行うことが可能となる制度を、親族外も適用できるようになった制度です。しかし、現実には、遺留分の放棄と同様なかなか実行するのは難しいでしょう。
では具体的にどのような対策ができるでしょうか?これはケースによるとしか言いようがありませんが、一般的には遺留分権利者に対して価額弁償金(キャッシュ等で買い取ること)を予め準備するのがベストで、保険金などを活用することが考えられます。

さらに会社法にある9つの種類株式などを活用して、色んな対策を講じることも可能です。また、非公開会社においては、特定の権利についてのみ属人的な定めを置くことも可能となりました。これは事業承継の方式や株式の構成、相続人などによって、いろんな方法が考えられますが、長くなりましたので次回詳細にコメントします。

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