CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは~資金調達part.2

福岡市は国家戦略特区として創業支援に注力しているので、創業間もない企業にとっては様々な情報やイベントに恵まれ、各種支援も豊富にあります。東京に比べると、創業に適したギュッと凝縮されたエリアが分かりやすく存在し、支援に関して必要な情報にたどり着きやすいので、起業するにはメリットを享受しやすい土地柄と感じます。

半面、「スタートアップ」の本来の意味が取り違えられているような場面に遭遇することも多い気がします。本来「スタートアップ」とは、創業間もないという意味ではなく、急成長する可能性のある魅力的なベンチャー企業を指します。今までにないイノベーションを起こして、現状や既存の価値観を大きく変えたいという目的を持つ企業であり、そういう企業が情報発信すれば、投資家の注目をも集めるはずです。しかし、やはり情報の多くは首都圏に集中し、画期的な技術やアイデアを持つスタートアップ企業やリードが取れる投資家もほぼ首都圏に集中しているのが現状です。そういう側面では、第三者割り当てによる資金調達をしたい企業が福岡に存在したとしても、首都圏のベンチャー企業に比べてやや不利なのではと思うことがあります。

そしてさらに言えば、世界的なパラダイムシフトを引き起こす「スタートアップ」は、やはりアメリカが中心であり、シリコンバレーに集中しています。そして「スタートアップ」の資金調達のあり方も、シリコンバレーを中心として、大きく変革の時を迎えている気がします。そこで今日は、世界的な潮流として、従来のベンチャーキャピタルとは違う手法を取る事業投資家=”コーポレートベンチャーキャピタル”(CVC)のアメリカにおける台頭について、尊敬する増島先生の翻訳書から、主要ポイントをご紹介したいと思います。

まずはCVCの最新のデータですが、CB insights(スタートアップの資金調達状況や業界レポートを提供するデータベースサービス)によると、2015年のベンチャーに関わる案件の19,3%がCVCでした。1308案件に284億ドルの資金を提供するまでに拡大しているそうですが、このデータだけではピンと来ないかもしれませんね。

米国ベンチャーキャピタル協会によれば、すべてのVCがスタートアップ企業に投資した588億ドル中、76億ドルがCVCでした。そして、VCファイナンスにCVCが関与する割合は、2010年の13%から2015年の5年間で21%にも達しています。

では、実際にCVCを実行しているのは、どのような企業でしょうか? 実は「フォーチュン50」(世界を変える企業50社)の50%、そして「フォーチュン500」(全米企業500社の番付)の33%が、自社にCVCプログラムを有しているのです。そして残りの企業も、当然自社へのコーポレートベンチャリングの導入を日々検討していることは必至だと思います。

この拡大する傾向は、スタートアップ企業のVCのエコシステムに関わる全ての人にとって、注目すべきことでしょう。そしてもちろん、この傾向は、日本市場においても大きな影響を与えていくことは容易に予想されます。従来のVCや投資家も含め、これから資金調達を検討しているスタートアップ企業の経営者は、このCVCへの理解を深め、よりよく協業できる方法を模索すべきではと専門家も警鐘しているようです。そこで次回は、CVCの目指すゴールについて、アメリカの情報をご紹介しようと思います。

余談ですが、欧米スタイルの方法とは全く違う進化を遂げている中国について、最近いろんな話題を聞く機会が増えてきた気がします。中でも北京、上海、深圳などのエリアでの出資に関する環境や、新たなビジネスの台頭など、日本がすっかり取り残されていうような印象さえ覚えます。福岡からはすぐなので、機会を作って行きたいなと思う今日この頃です。

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