CVCの投資目的は何だろう?~資金調達Part.3

企業が資金調達をする目的は、実に様々な状況や理由があると思います。例えばスタートアップ企業がベンチャーキャピタル(VC)から資金を調達しようと考える場合は、自社の事業のスピードを上げるためや人材投資を行いたいなど、事業拡大への挑戦の場合が多いと思います。 そしてこういうスタートアップ企業の場合、多くはIPO(株式上場)を一つの通過点として目標にしていることが多いのではないでしょうか? そしてIPOを目標にする企業がVCによる出資を受けることにより、VCからハンズオンと呼ばれる支援を受けることが可能となります。人材不足に悩むベンチャー企業にとっては、豊富な経験を持つ投資家から様々な支援を受けることは、事業をスケールする上で大きな助けとなります。

そして一般的な独立系、フィナンシャル系VCにとって、投資する目的は財務的リターンを得ることです。そしてVCは様々なLPからなるグループから資金を調達し、これらLP投資家のために一定の年数の間に資金を回収する義務を負っています。従って、ほとんどのVCは、IPOやM&A、またはセカンダリー(IPOが上場した後に売買すること)での売却により、投資回収を確実にすることを望んでいます。

これに対し、事業投資家=CVCの投資する目的は何でしょうか? 彼らの目的は、業種、ステージなどにより、多岐にわたります。様々なゴールのうち、相手が何を求めているのかを知ることは、資金を調達したいスタートアップ企業にとって、大変重要な鍵となります。そこで大まかな例となりますが、ピックアップしてみたいと思います。

■CVC(事業投資家)のゴール
・外部の優れたイノベーションを取り込む
・第三者の保有する技術を先進的に導入することに取り組む
・自社の顧客になったり、既存顧客へ大きな価値をもたらす可能性を生み出す
・国際的な情報源とのパイプを太くする
・出資先が持つ技術ライセンスを取得したり、技術を取り入れる
・継続的に多額の売上をもたらす可能性のある製品群の創出が見込める
・守りの投資として、脅威となるテクノロジーやビジネスモデルを持つ企業にリスクヘッジの意味で投資する
・アーリーやグロースステージの出資により収益機会を得る
・ベンチャーならではの企業文化を自社へ取り入れる
・優秀な人材を確保する
・自社の売上を伸ばすことにつながる
・PR効果を得るために投資する
・自社の競争力を高める
・新規市場を開拓する
・販売チャネルを拡大する
・製品・サービスの提供地域や国を拡大する
・自社製品やプラットフォームが関連するエコシステムを発展させる
・自社のR&D(研究開発)体制を強化する
・投資活動のエコシステムの一員となり、自社の企業価値を高める
・自社の専門領域に特化して出資する
・財務的リターンがさらに財務的リターンを生み出すような投資を目指す

以上、アメリカにおける事例を紹介しました。最近日本でも大手資本によるCVCが急速に増えてきているようです。これは企業の内部留保が増えている事に関連していると思いますが、同時に目先のリターンや売上よりも、10年先、20年先と、企業の将来を見据えて、何か手を打たねばならないという焦りのようなものにも感じられます。しかし、CVC活動を支えるベンチャー投資のプロを自社に獲得することは、アメリカでもかなり難易度があるそうですが、ましてや日本ではかなり難しいのではと推測されます。いつか機会があれば、この点CVCへ実際にお聞きしてみたいものです。

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ