LLCとLLPとの違いわかる?会社法を学ぼう PART.26
さて今回は、「日本版LLP」すなわち「有限責任事業組合」の方を見ていきます。「有限責任事業組合」は、共同営利事業を営む企業形態として、2005年に税制上のニーズから制定された新しい組合のことを指します。
法人税を課税されない新たな企業形態として近年ますます注目されており、昨年末より2,3問い合わせがあったものの、私も実際に設立支援をしたことがありません。もしこれをご覧の皆さんが実際に設立しようとされているならば、ぜひ経験談などお聞かせ頂ければ有難いです。
さて、まずなぜ「日本版LLP」と言うのでしょうか?実は前回コメントしたLLCも「日本版LLC」と言われています。これは、同じような仕組みであっても、国によって法律や税制上で、色んなパターンが存在するからと思われます。ちなみに「日本版LLP」はイギリスの方式を参考にしているそうです。
ではまず、「日本版LLP」の主な特徴を見ていきましょう。
<主な特徴>
事業形態 /法人格を持たない組合のため、法人課税されない
有限責任 /出資者たる組合員が出資額の範囲内で責任を負う
内部自治 /利益の配分や権限などを自由に決められる
構成員課税 /利益配分があった場合は、その出資者に直接課税される
業務執行 /業務範囲に一定の制限がある
構成員 /組合員が1人となることが認められない
出資 /金銭以外の労働、知的財産、ノウハウ等の柔軟な方法が可能
さらっと読んでも今一つピンと来ないかも知れませんが、法人と比べて自由度が高いことが伺えます。特に利益の配分や権限を自由に決定できるという点は、柔軟な運営が可能となるでしょう。また出資も金銭だけでなく、労働など色んな方法で出資できるようです。但し、この金銭以外の出資に関する評価方法は、第三者的評価として標準的な方法は存在しているのか、もう少し調査が必要です。
少しだけ関連する話題ですが、皆さんは Asset-based Lending、略称ABLという言葉をご存知ですか? 日本語で言うと「動産担保融資」のことですが、米国から入ってきた企業間融資の方法として、売掛債権や棚卸資産といった動産を担保に融資をする方法のことを指します。そして近年日本の銀行を中心に、企業が保有する商標や特許などの知的財産を担保として、融資をする方法も話題になってきました。但しここにおいても、その知的財産を評価する標準的な方法が存在せず、試行錯誤しながら収斂を目指しているようです。
さて、話を戻すと、「日本版LLP」はどのような事業に向いているのでしょうか? LLCもLLPも共に営利事業しか取り扱うことができませんが、内部留保や税金の関係から、「日本版LLP」は短期のハイリスク・ハイリターン事業に適していると思われます。それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。
まずは税務面ですが、「日本版LLP」は構成員課税が適用されるので、出資者に直接所得税が課税されます。つまり、「日本版LLP」自体は、法人税を支払わないため、たとえ損失が出た場合も、原則として出資元の会社や個人の所得と相殺され、そこで税務上のメリットが生じます。 一方、「日本版LLC」は法人格を持つため、法人税と所得税が適用されます。その結果、経済的2重課税が生じ、出資者へのリターンが「日本版LLP」に比べ低くなります。
そして内部留保に関しては、「日本版LLP」の事業を通じて取得した財産は、形式として組合財産にすることは可能です。ただし、このように組合財産として留保をするかどうかにかかわらず、組合事業から生ずる損益はすべて組合員に帰属し、税務上もこれに応じて各組合員において課税されることとなります。つまり、財産として留保はできますが、損益はすべて組合員に帰属し、組合員において課税されるため、利益の内部留保は実質できていないことになります。 このことが意味するものは、自社の内部留保によって次の新規事業に投資したり、M&Aをしたりといった永続的な企業活動は実現が難しいということになります。
いかがでしょうか、簡潔にLLCとLLPの違いを見てきました。いづれも一長一短ありますが、継続性のある事業はLLCの方が向いているように思います。また、株式会社に移行する可能性のある場合にも、LLCは可能ですが、LLPは解散して新たに設立することになります。さて最後に言い間違いシリーズのおまけです。「LLP」のLを一つ忘れるとプロパンガスになってしまいますので、ご注意を!
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