訴えられてからでは遅い!労災請求は過去最多、高額を更新中です

白い花101精神障害に係る労災請求や決定件数は、平成26年度で、請求件数1456件、決定件数1307件、支給決定件数497件と、いづれも過去最多を記録しています。また裁判に訴えられてしまうと、9割の確率で企業側が敗訴するようです。判決額の上位10例のうち、9例が過労または精神障害によるものですが、そのうち8例が1億を超えた損害賠償金額を支払う判決となりました。どうせ訴えられたのはブラック企業なんだろうと、マスコミの様に一面的に見てしまっては、御社もいつか大変な目に合うかも知れません。ぜひこの現実をしっかり見据え、コンプライアンスの遵守とともに、経営者もそこで働く社員も気持ちよく働ける環境を実現できるように、会社の体制を整えることが大事だと思います。

さて、”うつ病”について、きちんと考えたことがありますか? 私は、知人や以前の会社に”うつ病”にかかっていた方がいますが、自分自身がそうでない場合、症状を理解しようと努力しても、本当のところはどうしてもわからないと感じたことがあります。 実は”うつ病”は、「病因論」ではなく「症候論」に基づく診断基準で判断されるため、”うつ病”と判断された人とは、すなわち本人が”うつ病”だと思っている人を指します。このため、本人に自覚がないと発見が遅れてしまうことがありますし、逆に本来病気として取り扱うべきではない人も、メンタルヘルス不調に含まれてしまう危険性もあるということです。

業務によって心理的負荷(いわゆるストレス)を感じて、本人がメンタルヘルスの不調を訴えて労災請求した場合、どのような基準で判断されるかご存知ですか?  労働時間やセクハラ、パワハラなどの条件に加え、医師の診断書が出てしまえば、ほぼ労災認定されるようです。そして医師は、「症候論」に基づき診断するため、本人が”うつ病”を訴えれば、ほぼ診断書が出るものと考えた方が良さそうです。 一方で労働時間については、月160時間を超えるような「極度の長時間労働」にあたる場合はもちろんですが、月100時間を超えるようなケースも、長時間労働としてみなされます。一般的には、月80時間以上の時間外労働は、労災認定される可能性があると認識しておいた方が良さそうです。もちろん、業種業態によって、恒常的に長時間勤務が必要な会社もあるでしょう。 しかし経営上の課題をクリアしながら、社員の負担が少なくなるような対策方法があると思いますので、放置せずに社労士など専門家に相談してみることをお勧めします。

現在企業の民事責任は、法律によって企業に責任を追及しやすくなっています。民法415条の債務不履行責任に基づき、企業の安全配慮義務違反を問われるケースです。この違反については、企業側に帰責事由が無いことを主張、立証する責任があるため、労働者側から損害賠償請求されることが主流となっているようです。過去の厚労省の発表データでは、労災の発生率は、0.94%という想定以上に高い数字でした。しかも、1億近い使用者賠償責任額を請求されては、とても政府労災だけでは対応できないリスクがあります。

もちろん、自社の労働環境に問題があるようならば、出来る限り改善すべきだと思います。しかし、私が知る限り、一部のブラック企業を除けば、経営者は、出来る限り社員に良い労働環境を提供しようと努力されている方が多いと思います。逆に企業の現場では、「モンスター社員」に頭を悩ませる経営者が多く、私自身も過去に大変な目にあったことがありました。労使対立はケースバイケースで考える必要がありますが、少なくとも予防することが何よりも大事だと思います。

さて、最後に、具体的な予防策として提案があります。それは、今すぐ御社の就業規則、休職規程、採用時の契約書類の整備をすることです。そのために重要なことは、コンプライアンスだけでなく、経営者の理念や目標を社員と共有できるように作成することだと思います。大変な作業ですが、これを怠ると、大きな問題に発展するリスクがあることを認識していただきたいと思います。

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