事業承継における自社株は要注意③ 会社法を学ぼう Part24

事業承継対策における自社株の活用について、前回に続き全株式譲渡制限会社における「属人的な定め」(会社法109条2項)の活用をご紹介します。「種類株式」と違って、株式ごとの違いを定めるのではなく、株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定款で定める方法ですので、より柔軟性があると言える方法です。

前提として、非公開会社の経営者が事業承継を検討しているケースで、相続させたい後継者が経営をうまくコントロールできるように会社法を活用する方法のひとつです。

まずは、「属人的な定め」にはいくつか種類あるので、以下簡潔にご案内します。

①「剰余金の配当に関する定め」「残余財産分配に関する定め」
剰余金や残余財産分配について、定款により株主ごとの異なる扱いを定めることができます。具体例としては、(1)持株数に関わらず全株主同額とする(2)特定の株主を持株数以上の割合で優遇する方法などが考えられます。株式の属性として権利内容に際を設ける「種類株式」と違い、株主が受ける剰余金の配当額に上限を設けるなど、権利者の属性に基づく定款の定めが認められるのが大きな特徴です。

②「議決権に関する定め」
議決権について、属人的な取り扱いができる方法です。具体的な方法としては、(1)持株数に関わらず全株主の議決権数を同じにする(2)一定数以上の持ち株につき議決権の上限などを設ける(3)特定の株主の所有株式につき一株複数議決権を与える方法などが考えられます。後継者に十分なシェアの株式を譲渡できないケースなどで活用できるでしょう。

これら「属人的な定め」を定款で新設または変更を行う株主総会の決議は、特別特殊決議という方法になります。これは、総株主の半数(頭数)以上で、かつ総株主の議決権の四分の三以上の賛成が必要となる、かなりハードルの高い株主総会が必要となります。

*「種類株式とみなす取り扱い」
上記①と②の定款の定めがある場合、会社法の種類株式とみなす取り扱いがされます。具体的には、種類株主総会への参加などですが、種類株式と違い、登記されることはありません。

さて最後に、3つ目の活用方法として、相続人等に対する株式の売り渡し請求(会社法174条)を検討しましょう。通常未公開会社は、定款で譲渡制限付株式を定めていると思います。これは、株主が会社(取締役会や役員等)の機関の承認を得なければ、自由に株式を譲渡できない定めのものですが、相続による一般承継は対象とならず含まれません。 そこで、相続に関して対策するためには、定款に別途定める必要があるのです。もし相続人等一般承継人が、他の株主にとって好ましくない場合に、会社から排除することが出来る方法ですが、被相続人にとっても諸刃の剣となりかねない制度なので、要注意です。

・定款に定める内容
相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、会社は当該株式を売り渡すことを請求できる

・効力
会社が一般承継があったことを知った日から1年間以内に、一般承継人の同意なしに会社が株式を取得できる

・注意事項
当該一般承継人(相続された人)は、その株主総会において議決権を行使することができない(会社法175条2項)
このことはつまり、他の株主によって相続人を排除することができる可能性を秘めており、相続人以外の株主シェアに着目する必要があります。例えば経営支配上少ないシェアの特定の株主が、ケースによっては意図的にクーデターを起こすことが出来る場合もあるのです。

私自身、これまで自社の定款には必ずこの事項を入れていました。しかし、事業承継を考慮する場合、自分のシェアを除く株主構成や比率によっては、後継者となる相続人が排除されるおそれがあることは、目からウロコでした! 

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